私たちの日常生活のあらゆるコストには、エネルギー発生にかかる費用が含まれています。水道光熱費はもちろん、食料や日用品、ウェブサイト運営のためのサーバー代まで、すべてにエネルギーコストが影響しています。だからこそ、より効率的で安全なエネルギー開発は私たちの生活を大きく変える可能性を秘めているのです。今回は、そんな未来のエネルギー源として期待される「核融合発電」について見ていきましょう。

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核融合発電とは?そのすごさは?

核融合とは、原子核同士が融合して別の原子核に変わる反応です。本来は「原子核融合」と呼ぶべきところを縮めて核融合と呼んでいます。太陽や星は核融合によってエネルギーを生み出していますが、地球上でもこの反応を利用して発電することを目指しています。

1gの水素を核融合させて発生するエネルギーは、石油8トンを燃焼させたときに発生するエネルギーに相当します。この数字だけでも、核融合がいかに効率的なエネルギー源になり得るかがわかりますね。

核融合発電の優位性

核融合発電の魅力はいくつもあります:

  1. 資源が豊富で偏在しません。燃料の一つである重水素は地球上では50兆トンも存在し、事実上無尽蔵で偏在しません。
  2. 反応灰はヘリウムです。ヘリウムは放射性物質ではありませんし、そのまま放出しても環境に影響を与えません。
  3. 核融合発電所は、1基で火力や原子力と同じ規模、つまり100万kWの発電量を想定して設計が進められています。これは、天候に左右される太陽光発電や風力発電に対する優位性といえるでしょう。
  4. 核分裂反応と核融合反応の大きな違いは、核分裂が1つの反応が次の反応を誘発する連鎖反応であるのに対し、核融合は1つ1つの反応が独立していて連鎖しません。つまり原理的に核融合反応が暴走することはありません。

核融合発電に必要な条件

核融合反応からエネルギーを抽出するには、「三重積」と呼ばれる3つの必須条件があります:

  1. 水素を1億℃まで加熱した「プラズマ」という状態を作る必要があります。
  2. 粒子密度を「10²⁰個/m³」にすること。
  3. 閉じ込め時間が「1秒以上」でないと「1億℃」で「10²⁰個/m³」のプラズマは長時間維持できないし、エネルギーを取り出すこともできません。

どうやってエネルギーを取り出すの?

核融合発電の仕組みは、重水素と三重水素が核融合反応を起こすと、高速の中性子とヘリウム原子核が発生します。それぞれが持つエネルギーの割合は80%と20%です。ヘリウムはプラズマ中にとどまりプラズマを加熱しますが、中性子は磁場の影響を受けないためプラズマから飛び出し、プラズマを完全に覆う「ブランケット」と呼ばれる壁にぶつかります。

これにより、中性子は減速し、その運動エネルギーが熱エネルギーに変換され、ブランケットの温度を上げます。ブランケットには冷却材が流れ、外部の熱交換器へ熱エネルギーが輸送されます。その後、熱交換器を介して蒸気タービンを使う発電部については、火力発電や原子力発電などと仕組みは同じです。

実現の見通しは?